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12/7(土)14時~ マカオ版画アーティスト来日個展「花語」交流パーティ開催

2019.12.06

マカオよりアーティスト来日個展開催

’花語–李倩綺作品展‘
2019年12月7日(土)~12日(木)10時~18時(最終日17時)

オープニングパーティ 12月7日(土)14時~16時
ご興味のある方はどなたでもご参加いただけます。ぜひお越しくださいませ。
参加人数把握のためご来場いただける方はご一報いただけますと幸いです。
info@be-kyoto.jp 

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花言葉     序 李倩綺

 

2009年に私が芸術博物館オープンデーの体験イベントに参加しました。今回の経験がきっかけで初めて版画教室に足を踏むこととなり、版画とのご縁も続くようになりました。

最初のところ、私にとって版画とは何かと言えば、ただの日常生活の癒しに過ぎませんでした。新たな物事へのチャレンジにより、映えもないあり触れた日常を脱出してデカダンスな気分を転換しようとすることだったのです。あれから十年間が経った今となると、版画は既に日常生活の一部になっているのがもってのほか、私が絵画に対する認識、それに芸術創作への理解まで見直すことをもたらされてきました。版画の試作は徐々に趣味の範疇を逸してゆき、漸く私が生活を記録したり、表現したりする手段のほか、人生の歩みの刻々とした変化を伴にしてくださる存在までなりつつあります。

当初、お花を題材に取り入れようとしたのは心に傷を抱えている自分のために、この世間の物騒から静かな一時を求めたかったからです。咲き盛りのお花は美麗ではありますが、それと同時に散ってゆく結末がとっくに迫ってくることを示唆しています。こうしたさだめが待ち受けているにもかかわらず、お花は依然として散るまで精一杯咲いているその姿勢からある啓示を受けました。それは、人生はどのような苦境に追い詰められていてもそれでも踏ん張っていくことなのです。また、お花の命から人生の無常にもたらされた淋しさと自由さを感じ取り、そこから自分自身の人生を一層有意義な方向へ導くことの重要性をつくづくと悟りました。版画創作、及び花の絵画に対する理解が増えていくにつれて、当初の心の慰めを求めることから一転し、自分の目に映った自然の静かさと生命力を観客の方々と共有したい気持ちまで移ってきました。

今回の展示は「花言葉」を題としたものであり、ここ十年間花の絵画を習作することの歩みを記録しているものでもあります。作画の心情がスケッチの一点一画に包まれているほか、一つ一つのお花の背後に潜められた寓意は生活の情緒と結合して自分の日常日誌をもなしています。以下はそのうち一番思い出深い花々の花言葉を紹介します。

 

ひまわりとは、目標に向けてひたすら走ってゆく若者なり

ハブランサスとは 嵐に見舞われても堅実に前に向かってゆく人なり 

白玉蘭とは 自分の信条をしっかりと有する夢追い人なり

彼岸花とは 過ぎ去った魂を供する守護者なり

グロリオサとは 独特な形式で自我を表現する人なり

 

繚乱たる百花とはあたかも人生の様々な面相を代表するように其々のストーリーを物語っています。

最後に、今回の展示を借りて今までご指導くださっている王禎寶先生、それに作画の道でずっと供にしてくださる仲間たちに感謝の意を表したく思います。ご指導及びお供があるからこそ、私の作画の道を淋しさから免れて豊富でかつ多彩なものにさせています。

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心の声  
前書き  王禎寶

 

十年間とは矢の如し。李倩綺氏に言われなければ、危うく時の流れの速さを失念してしまっています。李氏が初めて版画教室に来た時、彼女にご自分の作品を持ってきていますかと尋ねてみたら、手ぶらでしかも絵画には門外漢といったご回答をいただきました。

十年という時間のスパンに起きたお肝に銘じた程の出来事の数々から、そもそも人生とは何事でも手ぶら同様の状態から始まり、何かを体得してから初めてそれを自分のものにする。また、何かを喪失してからこそ、かつて有したものを確認できたということを彼女が諭されたのです。

詩人が気にかける花々の開花と凋落とは、万物が従来、絢爛さから平凡さに帰するまでの過程を反映する縮図なのです。人間は誰でも時の流れに対してはたったの旅人の一人で、様々な経験からどこまで自分のためになるものを摂取できるかは、人それぞれのさだめです。今回は李氏が十年間を纏めての集大成の出展になります。李氏の手になる花々は、彼女が従来追及してきた世の中に咲いた花盛りの数々です。芸術が人間に対しては何かのためになるかといえば、それは一度傷づいた心が芸術の力を頼りにして時間の流れと共に再度持ち直し、物騒な世間に振り回されず平穏に生きてゆくことでしょう。その素晴らしさは、唯々皆様から目を向けるのを待っております。